研究概要 |
樹状細胞(dendritic cell : DC)は、T細胞を活性化する強力な抗原提示細胞であり、腫瘍免疫においても重要な役割を果たすものと期待されている。このDCの分化、増殖には、FLT-3リガンドーFLT-3系の関与が報告されている。前年度は、通常上皮系腫瘍では存在しないFLT-3がヒト腎細胞癌細胞株で広く発現していることを報告した。近年、急性骨髄性白血病において、FLT-3の変異による恒常的活性化が腫瘍発生の本質であるとされ、治療法としてFLT-3阻害薬が注目を浴びている。FLT-3活性化の機構として、傍細胞膜領域のtandem duplication(ITD)あるいは第2チロシンキナーゼ領域の点突然変異があげられる。そこで、本年度は、ヒト腎細胞癌におけるFLT-3の発現・活性化の機構およびFLT-3阻害薬により腫瘍増殖が抑制できるか否かについて検討した。 【結果】1.RT-PCRを用い6つのヒト腎細胞癌細胞株(SMKT-R-1,2,3,4,Caki-1,ACHN)におけるFLT-3-ITDの有無を検討したが、いずれの細胞株においても異常を認めなかった。 2.PCR-RFLPにて第2チロシンキナーゼ領域の点突然変異の有無を検討した結果、いずれも変異を認めなかった。 3.FLT-3阻害薬の一つであるチロシンキナーゼインヒビターSU5614を用い増殖抑制効果を検討したが、1-100μMの範囲内では明らかな増殖抑制を認めなかった。 以上より、腎細胞癌におけるFLT-3の発現・活性化は急性骨髄性白血病とは異なる機構で起こっている可能性が示唆された。また、今回検討したSU5614では、明らかな増殖抑制効果を認めなかったが、これ以外にFLT-3阻害薬(PKC412,CT53518,CEP-701,SU11248)が知られており、今後もFLT-3を標的とした新たな治療法の可能性は期待できるものと思われた。
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