研究概要 |
今年度はタクロリムスによる尿細管間質病変のモデルを作成し、タクロリムス投与時に見られる腎機能、腎組織変化各種遺伝子発現の変化を包括的に検討した。雄SDラットを実験の一週間前より減塩食(0.5%Na)で飼育し、タクロリムス(1mg/kg)を10日ならびに42日間、連日皮下投与した。対照群としてvehicleを同様に投与した。タクロリムス投与終了前日に代謝ケージにて24時間採尿後、ラットを麻酔し、採血後腎組織を摘出、組織学的検索ならびにRNA抽出に供した。タクロリムス投与により経時的に内因性クレアチニンクリアランスは低下し、腎機能の低下が認められたが、全身血圧には全く影響しなかった。一方、組織学的には42日タクロリムス投与により輸入細動脈壁の硝子化病変と尿細管の萎縮を伴う尿細管間質の縞状の線維化が認められた。各群のラットの腎皮質よりRNAを抽出し等量混和後、polyAフラクションを逆転写し、32P-dATPで標識し、それぞれ1,176個のcDNAを固定した2種類のメンブレンマクロアレイとハイブルダイズし、10日目および42日目における遺伝子の発現プロフィールを検討した。その結果、タクロリムス投与により40種以上の遺伝子発現の亢進が認められたが、その発現プロフィールは10日目と42日目で明らかに異なっていた。一方、逆に10-50種の遺伝子発現がタクロリムスで抑制を受けていることが明らかとなった。現在、個々の遺伝子発現の変動パターンについての解析を進めている。
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