研究概要 |
尿路結石は、ネフロンの中で、crystal nucleation,growth,aggregation,concretionの現象が関与して完成するといわれている。それらの過程において、結石結晶の尿路上皮(近位尿細管や遠位尿細管)への付着は、結晶がある程度の大きさに育ち、retentionを引きおこすという重要なステップと考えられる。この尿路上皮-結晶相互作用において、サイトカインは何らかの生理的な作用を有している可能性がある。そこで、尿路上皮細胞のサイトカイン産生能を検討するため、シュウ酸カルシウムー水化物(calcium oxalate monohydrate,COM)結晶を尿路上皮細胞に付着させるモデルを作成した。用いた尿路上皮細胞株は、MDCK,LLCPK1,BSC1,HK-2である。それぞれの尿路上皮細胞株に付着するCOM結晶量を定量化するために、^<14>CでラベルしたCOM seedを作成した。このseedをHanks Balanced solutionに浮遊させ、尿路上皮株に、数時間から5日間まで接触させた後、非付着性のCOM seedは、3回の洗浄でのぞき、付着したCOM seedは、6NHCLで溶解した後、液体シンチレーションカンウンターにより測定した。尿路上皮細胞がconfluentに達して安定化した状態では、同じ条件でCOM seedを接着させても、細胞により、付着能が異なることが判明した。とくに、検討した細胞の中では、MDCK細胞が最も高い付着能を示した。一方、安定期に比較して、confluentにいたる増殖期にある細胞の方が、結晶付着能は、約1.2から1.5倍増加していることがわかった。また、付加的な実験として、結石のcrystal nucleation,growth,aggregationの阻止因子と知られている酸性ムコ多糖類についても、COM seedの付着能におよぼす影響について検討した。10〜1000microg/mlのヘパリンまたはコンドロイチン硫酸を尿路上皮細胞株の表面にコーテイングすると、酸性ムコ多糖類の用量依存性にCOM seedの付着が抑制されることが示された。(第10回尿路結石研究会にて発表。2000年) 以上より、尿路上皮細胞とCOM seedの付着するモデルがほぼ確立され、このモデルを用いて、結石付着という細胞障害により各種のサイトカインが産生されるかどうかを検討する予定である。
|