研究概要 |
前年度の研究により、各種尿路培養細胞株のシュウ酸カルシウム結晶付着能を定量化するモデルが確立され、各種酸性ムコ多糖類がシュウ酸カルシウム結晶の付着を抑制することを再確認した。本年度は、まず、蓚酸カルシウム結晶の付着により尿路上皮細胞がサイトカイン産生するかどうかを検討した。培養細胞株(MDCK, LLCPK1,HK2)に1mg/mlのシュウ酸カルシウム結晶を4時間接触させて、その培養液上清中のIL-6の濃度をサイトカインキットを用いて測定したが、検出されなかった。従来より、いくつかの尿路上皮癌細胞株はIL-6を産生することが知られていたが、正常尿路上皮細胞では、IL-6を産生する可能性は極めて低いと考えられた。次に、シュウ酸カルシウム結晶やシュウ酸カリウムが尿路上皮細胞株にあたえる細胞障害、allopurinolによる坑細胞障害効果、さらには、allopurinolのシュウ酸カルシウム結晶の付着に及ぼす影響について検討した。シュウ酸カルシウム結晶およびシュウ酸カリウムを4時間培養細胞株に接触させ、LDH release assayによる評価では、コントロールに対して14.5%程度の細胞障害があり、antioxidantである2mMのoxypurinolやallopurinolの存在下でシュウ酸カリウムや結晶を接触させると、8%の障害までとわずかに軽減することが判明した。さらに、この尿路上皮細胞とシュウ酸カルシウム結晶との付着におよぼすallopurinolの効果を検討したところ、シュウ酸カルシウム結晶の10分間の接触では、シュウ酸カルシウム結晶の付着量は、2mMのallopurinol, oxypurinolの前処置により、コントロールの付着量の50%まで抑制することがわかった。しかし、hypoxanthineの前処置では、まったく抑制しなかった。以上よりxanthine oxidase inhibitorであるallopurinolやoxypurinolは、シュウ酸カルシウム結晶の尿路上皮細胞への付着を抑制することが示された。しかし、LDH release assayによる細胞障害能は、allopurinol投与で、わずか6%しか軽減されず、さらに、尿路上皮細胞とシュウ酸カルシウム結晶の接触時間10分では、わずか4%程度の障害能しか示さないので、シュウ酸カルシウム結晶付着のメカニズムは、単純な蓚酸カルシウム結晶による尿路上皮への細胞障害だけで説明がつかず、何らかの未知のメカニズムが存在すると考えられた。
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