膀胱癌のリンパ節転移に果たすインテグリンの役割を明らかにする目的で、ヒト膀胱癌細胞株UM-UC-3およびUM-UC-13をマウス足底に移植し、これにより上腕リンパ節に転移した転移巣のインテグリンの発現状況を、足底の原発巣のそれらと比較した。インテグリン・サブユニットはα1〜6、β1〜2に対するモノクローナル抗体を使用した免疫組織染色(組織ABC法および組織蛍光染色法)により同定した。その結果、UM-UC-3、UM-UC-13共に原発巣とリンパ節転移巣のインテグリン発現分布に差は認められなかった。リンパ節転移巣を摘出し、これをホモジェナイズしたのち、in vitroで培養した腫瘍細胞を再度他のマウスの足底に移植したが、上腕リンパ節への転移頻度は上昇せず、現在6代目を継代中であるが、当初計画していた高度リンパ節転移株は現在のところ樹立できていない。このような状況から、上記の細胞株をマウスの膀胱に同所移植した実験モデルについてリンパ節転移の有無を検討したが、この実験モデルではリンパ節転移は認められなかった。以上より、本研究では、当初の計画通りに進行せず、今後使用する細胞培養株あるいは宿主となる動物種を代えておこなうか、実際の臨床材料を使つて膀胱原発巣とリンパ節転移巣のインテグリンの発現分布を検討すべきであると思われた。
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