研究課題
化学発癌物質により誘発したラット膀胱癌に対してHSVtk/GCV(Gancicrovir)遺伝子治療を行ったところ、広汎な細胞死を誘導することが出来た。今回、HSVtk/GCVの膀胱癌細胞への殺傷機構の一端を調べる目的で、in vitroの実験を実施した。マウス膀胱癌細胞MBT-2にHSVtkをカチオン性リン脂質により遺伝子導入し、かつ培養液中に20μM GCVを添加した。その48時間後に60%の膀胱癌細胞が死滅した。1時間当たりのBrdUの取り込み率を測定したDNA合成は80%低下した。Flow cytometerを用いた解析では、アポトーシスとネクローシスを示唆する細胞集団が観察された。次いで、アポトーシスの実行因子であるCaspaseの活性をFluorometric assayにより測定した。その結果、HSVtk/GCV処置では、空ベクター群と比較して、Caspase-3が著しく高値を示し、少なくともアポトーシスが生じていることを裏付けた。また、同時にCaspase-8および9の活性が有意に上昇していたことから、ミトコンドリア経路を介したアポトーシスである可能性が示唆され、次にカチオン性蛍光色素を用いてミトコンドリア膜電位の測定を行った。その結果、HSVtk/GCV処置した細胞では、無処置の細胞および空ベクターを導入した細胞と比較して、ミトコンドリア膜電位は有意に低下していた。また、in vivoでHSVtk/GCV遺伝子治療を行った膀胱癌組織について、活性型Caspase-3を認識する抗体を用いて免疫組織化学染色を施したところ、細胞死領域において強い発現を観察した。以上、HSVtk/GCV誘発の細胞死にはアポトーシスが含まれ、それはミトコンドリア経路を介するものであると判断された。
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