研究概要 |
自殺遺伝子のHSVtkは薬剤であるganciclovir (GCV)を代謝するとその毒性のため細胞死に至らせる。そこで、アポトーシス誘導遺伝子のbaxとHSVtkの膀胱癌に対する効果を検討した。In vitro実験:Bax, HSVtkまたは両者遺伝子の複合体を膀胱癌細胞に遺伝子導入した結果、Bax単独では約30%の細胞が死滅し、HSVtk/GCV群では約60%の細胞が死滅した。しかし、HSVtk/GCV+Baxでは複合効果は見られず、むしろHSVtk/GCV群より劣っていた。そこで、以下のin vivo実験ではHSVtk/GCVを選択した。In vivo実験:F344系雌ラットに250ppm BBNを6ヶ月間投与し、膀胱癌を誘発させた。膀胱頂部より膀胱腫瘍にレポーター遺伝子を注入し、Electrogene Transfer (EGT)した。その発現はEGT後の4〜7日で強い発現を示した。次に膀胱腫瘍内にHSVtk,空vectorをEGTし、GCVを毎日i.P.投与し、8日後に屠殺剖検した。病理組織学的に検索した結果、HSVtk/GCV群では強い炎症を伴う有意な細胞死領域の増大をみた。また、同群では腫瘍内でのアポトーシスの増加とDNA合成の低下傾向をみた。また、腫瘍壊死周辺にマクロファージの集族がHSVtk/GCV群でしばしば観察され、Bystander効果の一役を担っているものと思われた。HSVtk/GCVの殺傷機構の一端を調べる目的で、in vitroにてマウス膀胱癌細胞にHSVtkを導入した。48時間後に60%の細胞が死滅し、DNA合成は80%低下した。Flow cytometerを用いた解析では、アポトーシスとネクローシスの細胞集団が観察された。また、Caspase活性はCaspase-3、8および9が有意に上昇していた。次いで、ミトコンドリア膜電位の測定の結果、HSVtk/GCV処置で有意に低下していた。以上、ラット膀胱癌に対するHSVtk/GCV治療は1回のEGTにより広汎な細胞死を惹起させることが可能であり、またHSV出GCV誘発のアポトーシスはミトコンドリア経路を介するものであった。膀
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