研究概要 |
凍結保存融解後のマウス未熟卵胞(原始卵胞、一次卵胞)の異種間移植のためのマイクロカプセルを開発するとともに、初期卵胞の発育機構に関し、卵細胞からのシグナリングを中心とする卵成熟機構の解明を目的として基礎的研究を行った。 1)未熟卵胞の凍結条件に関しては、5 step dillution緩徐凍結法により60%程度の生存率が得られた。さらに、凍結融解時にNO消去剤(ヘモグロビン)および活性酸素消去酵素(SOD)を同時添加することにより有意に高率な生存率が得られた。 2)マイクロカプセルの素材の比較検討では塩化アルギンビーズ、アガロース、三層性アガロースカプセルともin vitroでの培養実験では生存率に差は認められず、また、ステロイド産生を確認できなかった。 3)ヌードマウスを用いた移植部位の比較では腹腔内、卵巣嚢内いずれの部位においても卵胞の生着、発育を認めることを確認した、しかし、卵胞腔形成迄の発育を認めたが、成熟卵胞迄の発育は認められなかった。さらに、FSHは濃度依存性に卵胞発育を促進したが、EGFの効果は確認されなかった。また、ラットへの異種間移植ではマイクロカプセルを用いても卵胞の発育は確認されなかった。 4)1次卵胞、2次卵胞においてGDF-9,C-kitの発現をreal time PCR法により確認した。緩徐凍結法により未熟卵胞の凍結保存の可能性が示唆され、NOおよび活性酸素の消去が凍結融解後の生存率の向上に寄与することが示唆された。以上の成績から初期の目的の基礎的部分は達成されたと考えるが、今後、免疫抑制剤の検討、マイクロカプセル改良などの検討、さらなるシグナリングの検討の必要性が示された。
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