下垂体前葉初代培養細胞やソマトトローフ、ラクトトローフ由来の細胞株を用いたこれまでの報告では、アクチビンは成長ホルモン(GH)やプロラクチン(PRL)の合成や基礎分泌に対して抑制的に働くことが報告されていた。また、ソマトラクトトローフ由来GH_3、cellによる最近の報告ではGHの合成は促進されるが、PRLの合成は抑制されることが示された。これらの報告では血清添加培地が用いられているため、血清中の成長因子/サイトカイン類が影響している可能性が考えられた。又、通常、培養系には抗生剤が添加されているが、頻用されているaminoglycoside系抗生剤はphosphoinositideの加水分解を抑制する事が報告されており、抗生剤によるシグナル伝達系への影響も関与している可能性が考えられた。このため、私達は、PRL/GH産生性細胞株GH3細胞を用いて、無血清抗生剤非添加無の培養系でアクチビンの作用を検討し、アクチビンがPRLとGHの産生を促進する事を発見した。この系では、アクチビンの単独添加により培養時間の経過と共にPRLの基礎分泌は増加した。アクチビンは30-300ng/mlの濃度範囲で、用量依存性にPRLとGHの産生を促進した。また、アクチビンとアクチビン結合蛋白質であるフォリスタチンの同時添加により、アクチビンによって促進されたPRLとGHの基礎分泌はフォリスタチンの用量に依存して抑制された。更に、アクチビンと構造類似性の高いTGF-βについては、TGF-βがMAPキナーゼ系のTAK-1を活性化することが報告されていたため、TAK-1の下流にあるp38の阻害剤であるSB203580をアクチビンと同時添加した。これにより、アクチビンのPRL/GH産生促進作用は抑制されたことより、アクチビンのPRL/GH産生調節作用には、MAPK系とのクロストークが存在する可能性が考えられた。
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