研究概要 |
我々は、以前より、婦人科腫瘍における第三染色体上の遺伝子群の異常に注目し、ヒト卵巣癌由来培養細胞、卵巣癌臨床検体から抽出したDNAに対し、3q上の17種類のマーカーを用いたサザンブロット解析により、3q26.2付近を中心とした、約30cMの領域に遺伝子増幅を確認した。(Sugita M.,Tanaka N., et al.Cancer Genet.Cytogenet.117:9-18,2000)今年度は下記のごとく、研究を進めた。 1(1)ヒト卵巣癌培養細胞株(HAC-2,OMC-3,HOC-21,HOC-1,HUOKAII,SHIN-3,HMOA,HUOA)計8株を材料として、TRIZOL試薬を用い、細胞を可溶化した後,-80度にて凍結保存した。必要に応じ可溶化した各細胞よりRNAを抽出精製を行い、各細胞由来のRNAの存在を確認後、RT-PCR施行のための、reverse transcription反応を行わせて各細胞由来のcDNA合成を行い、-20度で保存した。(2)前述の、3q26.2付近を中心とした、約30cMの領域にその位置が同定されているSTSマーカーをSTS data baseより検索し、11種類のSTSマーカー(RH111031,RH38233,RH113884,RH109579,D3S2458,RH123089,RH123920,RH110944,RH123586,RH120812,RH112951)をビックアッブし、各マーカーに対するPCRブライマーを設定作成した。現在各培養細胞由来RNAについて、これらのPCRブライマーを用い、RT-PCRを行い、遺伝子発現の増強部位を検索中である。2.インフォームドコンセントの得られた10例の卵巣癌手術摘出標本より、癌部分、非癌部分を直径5mm角に切り出し、生理食塩水と共に、液体窒素中に凍結保存した。必要に応じ、フェノール・クロロフォルム法によりDNAを抽出し、-20度で凍結保存した。3.卵巣癌においては3q26.2近傍でPIK3CA geneの発現の増強が報告されており(Shayesteh L.et.al.Nature Genetics 21:99-102,1999)、本遺伝子の発現増強の有無につき検索する必要がある。
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