研究課題
基盤研究(C)
25日齢の雌ラットの発育卵胞を摘出して器官培養を行う系を用いて実験を行った。卵胞摘出前にequine chorionic gonadotropin(eCG)を作用させると、TUNEL法によるアポトーシスの発現が有意に減少することが示された。また同時にこのアポトーシス発現の減少に合わせてカスパーゼ3のmRNAの発現が減少していた。このことより、卵胞におけるアポトーシスの発現にはカスパーゼ、なかでもカスパーゼ3が関与していることが示唆された。次にbcl-2遺伝子ファミリーの関与を検討した。bcl-2遺伝子ノックアウト雌マウスから卵巣を摘出し、形態学的組織学的検討を行い、日齢を一致させたワイルドタイプマウスと比較した。卵細胞を含む原始卵胞はわbcl-2遺伝子ノックアウトマウスで減少しており、卵子と卵胞の保存さらには生殖能を保つためにBcl-2タンパクの存在が重要であることが示唆された。bax遺伝子ノックアウトマウスを用いた同様の実験では、bcl-2の場合と逆にノックアウトマウスで原始卵胞が多数保存されており、Bcl-2タンパクと逆にBaxタンパクがアポトーシスを促進することが示唆される。このほか、卵胞内における血管新生因子の発現を示唆する結果などが得られ、卵胞発育閉鎖の機序を総合的に解明する一助となった。さらに臨床上重要視されている抗癌剤による化学療法後の卵巣不全の発生へのアポトーシスの関与を検討した。卵巣癌治療に使用されることの多いDocetaxel(DT)を検討の対象としたところ、DTが顆粒膜細胞だけでなく卵細胞にもアポトーシスを誘導することが観察され、卵への直接作用が示唆された。本研究により、卵巣機能不全や排卵障害、早発閉経の病態の解明、さらには悪性腫瘍治療における生殖機能温存を考慮した治療法の開発が進むことが期待される。
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