研究概要 |
1,性ステロイドがテロメレース活性におよぼす影響に関して 我々は1999年12月にエストロゲンがテロメレースの活性決定因子であるhTERT(human telomerase reverse transcriptase)の転写を活性化することを報告した。これに引き続いてプロゲステロンがhTERT転写に与える影響について検討した。その結果、プロゲステロンは24時間以内の短時間ではMAP kinase cascadeを介してhTERTの転写を活性化し、長時間ではP21の活性化を介してhTERT転写を抑制することを明らかにした。以前に我々は子宮内膜のテロメレース活性が月経周期の増殖期で高く、分泌期になると低下することを報告したが、性ステロイドによるhTERT発現の制御はこの変化を明快に説明するものである。 2,2-5A antisense oligonucleotide systemを用いたテロメレース抑制に関して 種々の子宮頚癌細胞株および正常細胞、およびテロメレース陰性の不死化細胞株に対してテロメレースのRNA鋳型コンポーネントであるhTRの2-5A付加antisense oligonucleotideを加えることでテロメレース活性を抑制したところ、テロメレース陽性の細胞でのみ細胞増殖が抑えられ、アポトーシスが観察された。これによって、このシステムが癌の遺伝子治療に有効である可能性が示唆された。 3,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によるhTERT転写活性化に関して テロメレース陰性の正常細胞にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を加えるとhTERTが転写活性化されたが、この作用はhTERTプロモーター上のSp1 siteが重要な働きを担っており、正常細胞におけるhTERT転写抑制にはヒストン脱アセチル化酵素が働いていることを示した。
|