研究概要 |
【目的】基底膜構成成分のラミニンが卵巣癌の増殖と転移に重要な役割を果たすかどうか。次に、異なる生物活性を持ついくつかのラミニン活性ペプチドが卵巣癌の増殖と転移にどのように関与するかを検討した。【方法】未分化顆粒膜細胞株(HRP-53)、あるいはYKT(当教室で樹立した卵巣上皮性癌細胞)とMatrigel(基底膜成分)あるいはlamininとヌードマウス卵巣に同所移植した。次に各細胞株をラミニンから精製された種々の活性ペプチド(A13;RQVFQVAYIIIKA, A12;WVTVTLDLROVFQ, AG73;LQVQLSIR, IKVAVYIGSR)と共にヌードマウス卵巣に移植した(実験群)。(1)卵巣に形成される腫瘍径、肺・肝への転移数、活性ペプチドを加えない対照群と比較した(Matrigel単独群、laminin単独群)。(2)各群の卵巣腫瘍でのSurvival gene(Bc1-2,Mdm2)とDeath gene(BAX)発現をWestern blot法で検討した。【結果】(1)Matrigel単独群、laminin単独群間には腫瘍サイズに有意差は認められなかった。(2)AG73,IKVAV, A13添加群では、対照に比べ腫瘍サイズは優位に大きく、肺・肝への転移数も多かった。一方、YIGSR、A12添加群では、腫瘍径は小さく、転移数も少なかった。(3)Survival gene発現はA13、AG73添加により亢進し、YIGSR、A12添加では抑制された。Death geneの発現は群間に有為差を認めなかった。【結論】ラミニンは卵巣癌の発育・転移に非常に重要な役割を果たす。ラミニンペプチドのうち、AG73,IKVAV, A13は卵巣癌の増殖と転移を促進させる。逆にYIGSR、A12はこれらの抑制する。また、この機序にはBcl-2,Mdm2発現の変化が関与する。
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