研究概要 |
子宮内膜発癌に対して、タモキシフェンは促進的に作用するが、逆にプロゲステロン、甘草エキス、ダナゾール、トレミフェンなどは発癌抑制的に作用し、その機序として癌原遺伝子である、c-fos,c-junや内因性サイトカインであるTNF-α,IL-1αなどの関与を報告してきた。 今回の研究は、元来イソフラボン(植物性エストロゲン)ではあるが、その投与量によりむしろ抗エストロゲン作用を示したり、発癌抑制的に作用するとの報告もある、ゲニステイン(G),ダイゼイン(D)による、マウス子宮内膜発癌に対しての影響を検討した。 1)短期的実験:去勢マウスの子宮全体を用いて、c-fos,c-jun,TNF-α,IL-1αmRNAに関しては、総RNAを抽出後、RT-PCR法、サザンブロット解析により、半定量的に、また、蛋白発現に関しては、パラフィン・ブロックを用いて、免疫染色で検討した。去勢マウスに2週間エストロゲンを単独投与した、コントロール群に比して、子宮摘出の24時間前にG,D(1mg/30g体重,sc)を投与した併用投与群は、子宮重量、c-fos,c-jun,TNF-α,IL-1αmRNAおよびその蛋白発現は減弱傾向を示した。 2)長期的実験:G,D(1mg/30g体重,sc)はともに化学誘発マウス子宮内膜発癌に対して、内膜腺癌、異型増殖症発生頻度を有意に減少し、子宮重量も減少させたが、他の内膜増殖症発生頻度には影響を与えなかった。 以上より、一般よりやや高いと思われる今回の投与量においてもG,Dは内膜発癌に対して抑制的に作用し、エストロゲンにより過剰発現するc-fosやc-junの抑制ばかりでなく(抗エストロゲン作用)、TNF-α,IL-1α(内因性サイトカイン)の発現抑制など他のメカニスムの関与も示唆された。
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