本研究では子宮内胎児発育遅延における胎盤内凝固に関する胎盤マクロファージの機能解析手段の確立として I)陰性荷電リン脂質フォスファチジルセリン(PS)誘発マウス胎仔発育遅延モデルの確立 II)マクロファージ遊走阻止因子(MIF)cDNAのセンス並びにアンチセンスMIFリコンビナントアデノウイルスの作成 III)同センス並びにアンチセンスMIFリコンビナントアデノウイルスが非妊娠マウスにおいてMIFタンパク発現の調整が行われていることの確認を行った。 I)フォスファチジルセリン(PS)誘発マウス胎仔発育遅延モデルに対してプロテインCプロテインS擬固調節系において中心的役割をなす抗凝固たんぱく質である活性化プロテインCが胎仔発育遅延を抑制した。以上より同モデルが過凝固状態に基づくもので、過凝固状態が直接的に胎仔発育遅延を起こしうることを示した。II)III)に対し、すでに確立しているBCG-LPS誘発マウス肝不全モデルにおいて抗MIF抗体が生存率低下を抑制している報告があることから同モデルを用いて検討した。1)アンチセンスMIFアデノウイルス投与マウスでは肝でのMIFタンパク質の発現を抑制した。2)センスMIFアデノウイルス投与マウスで見られる肝壊死像がアンチセンスMIFアデノウイルス投与マウスでは見られなかった。3)LacZアデノウイルス投与マウスと比較してアンチセンスMIFアデノウイルス投与マウスでは肝でのマクロファージ上F4/80抗原発現細胞数が減少したのに対し、センスMIFアデノウイルス投与マウスでは上F4/80抗原発現細胞数が増加した。4)アンチセンスMIFアデノウイルス投与マウスはLacZアデノウイルス投与マウス並びにセンスMIFアデノウイルス投与マウスと比較して有意に生存率が高かった。以上より作成したリコンビナントMIFアデノウイルスはBCG-LPS誘発マウス肝不全モデルにおいてMIFタンパク質発現を調節することが確認できた。 作成したマクロファージ遊走阻止因子(MIF)cDNAのセンス並びにアンチセンスMIFリコンビナントアデノウイルスはウイルスによる遺伝子導入が可能の場合、マクロファージを介する炎症の調節を可能とし、その機能を制御することにより機能解析が行える。つまり、センスMIFアデノウイルスにより、マクロファージを介する炎症の促進、アンチセンスMIFアデノウイルスによりマクロファージを介する炎症の抑制を行う手段を作成した。
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