研究概要 |
CDDP耐性移植卵巣癌においてもp53遺伝子導入はCDDPのアポトーシス誘導を増強し,著明な腫瘍増殖抑制効果を示したことから,p53遺伝子導入による薬剤耐性克服の可能性が示唆された.卵巣癌は早期より腹膜播種を起たしやすく,容易に癌性腹膜炎を発症する.一方,癌性腹膜炎は閉鎖腔であり,遺伝子治療の標的として適していると考えられる.本研究では,卵巣癌癌性腹膜炎に対する化学療法誘導アポトーシスを介した遺伝子治療の効果を明らかにする. p53遺伝子欠損卵巣癌株HRA細胞(5×10^6個)を腹腔内に移殖したSCIDマウスを癌性腹膜炎腹膜炎モデルとした.Adexp53を用いてp53遺伝子を導入し,CDDP単独投与群,p53遺伝子導入群,p53遺伝子導入とCDDPとの併用群の3群に分けて生存率をカプランマイヤー法により算出比較した.無治療コントロールではすべて移植後14日以内に死亡した.CDDP単独投与群の平均生存期間は17日,p53遺伝子導入単独群では16日であった.一方,併用群では,20日での生存率は50%を示し,有意に良好な予後が得られた.以上の成績から,p53遺伝子導入はCDDP感受性を増強させ,上皮性卵巣癌の予後改善に有効であることが示唆された.本成績は今後の卵巣癌に対する遺伝子治療の方向性を示すものと考えられた. 本研究成果について,学会および論文に発表した.
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