研究概要 |
[目的]FISH法を用いて重症乏精子症男性の精子染色体異常率を検索し、乏精子症男性や正常男性での異常率と比較検討した。[方法]同意が得られた重症乏精子症男性(S群)8人、乏精子症男性(O群)4人、正常男性(N群)7人から精液を採取し、精液パラメーターを測定した。精液を洗浄しカルノア液でスライドグラス上に固定し、dithiothreitolで前処理した後にFISH法に供した。FISH法はOncor社のDNA probe:DXZ1(digoxigenin標識)、DYZ1(biotin標識)、D18Z1(digoxigenin標識+biotin標識)を同時に用いたtriple-color法で行い、蛍光顕微鏡下にシグナルを判定した。また、すべての例について末梢血リンパ球の染色体核型をG分染法およびFISH法を用いて分析した。[結果]末梢血リンパ球の染色体核型はすべて46,XYで、性染色体異常細胞が低頻度に存在するモザイクの可能性は否定された。精子濃度はS群0.5〜4.9×10^6/ml、O群8.0〜13×10^6/ml、N群50〜83×10^6/mlであった。総計183,165個の精子を分析した結果、S群ではXYdisomy精子、diploid精子の頻度が各々平均0.34%、0.38%で、O群(0.10%、0.21%)、N群(0.10%、0.17%)に比して有意に高率であった(p<0.01)。しかし、XX,YY,18番染色体のdisomy精子の頻度は各群間で差を認めなかった。[結論]今回の成績から重症乏精子症男性では乏精子症男性や正常男性に比してXY disomy精子が高率に存在することが判明し、そのため顕微授精による妊娠例では47,XXYの発生率が高くなることが示された。
|