研究概要 |
【目的】リングY染色体異常を有する重症乏精子症男性の精子の染色体構成解析することを目的とした。【対象および方法】症例は37歳男性、精液所見は精液量8ml、精子濃度0.4×106/ml、運動率20.5%、奇形率59.1%で重症乏精子-精子無力症を呈していた。末梢血リンパ球を用いたG分染法およびFISH法による染色体検査での核型はmos45,X[72]/46,X,r(Y)(p11.3q12).ishr(Y)(SRY+)[23]/46,X,dic r(Y;Y)(p11.3q12;p11.3q12).ish dic r(Y;Y)(SRY++)[5]であった。患者男性精子の染色体構成、さらに、これら精子が受精した場合に児が持つ染色体核型に関して十分に説明し、インフォームドコンセントを行った上でFISH法による精子染色体分析を実施した。精子染色体分析は18番、X、Y染色体のセントロメアに特異的なプローブ(CEP18,CEPX,CEPY:Vysis社)を同時に用いたthree color FISH法、および13番、21番染色体に特異的プローブ(LSI13,LSI21:Vysis社)を用いたtwo color FISH法により行った。【結果】18番,X,Y染色体を(18/X)、(18/Y)、(18/XY)、(18/O)、(18/YY)で持つ精子の割合は各々35%、24%、16%、15%、1%であった。また、13番,21番染色体を(13/21)、(13/13/21)、(13/21/21)、(13/0)、(0/21)、(13/13/21/21)で持つ精子の割合は各々65%、6%、6%、5%、11%、7%であった。この結果をもとに遺伝相談を行った結果、患者夫婦の希望で顕微授精(ICSI)を施行することになった。【結論】性染色体に関しては35%の精子が正常で、受精しても児に大きな異常を来たさないとされるr(Y)(p11.3q12)精子を含めると59%の精子が正常精子と考えられた。また、13番、21番染色体に関してはinterchromosomal effectの存在が示唆された。
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