研究概要 |
1.重症乏精子症男性精子の検討 重症乏精子症群ではXYdisomy精子、diploid精子の頻度が各々平均0.34%、0.38%で、乏精子症群(0.10%、0.21%)、正常男性群(0.10%、0.17%)に比して有意に高率であった。しかし、XX, YY,18番染色体のdisomy精子の頻度は各群間で差を認めなかった。これらの成績から重症乏精子症男性では乏精子症男性や正常男性に比してXY disomy精子が高率に存在することが判明し、そのため顕微授精による妊娠例では47,XXYの発生率が高くなることが示された。 2.不妊男性(染色体異常保因者)精子の検討 (1)21番、22番Robertoson型転座保因男性では21番及び22番染色体に関する不均衡型精子の割合は3.82%で対照に比して有意な高値を示したが理論値の16.7%に比べると明らかに低値を示した。また、均衡型精子の割合は、96-1%であった。以上の結果から、Robertoson型転座保因男性では、精子形成時の成熟分裂での分離は不均衡に起きているか、あるいは不均衡型精子形成時に淘汰が起きていることが考えられた。また、18番、X、Y染色体においてはinter-chromosomal effectは存在しないと考えられた。 (2)リングY染色体男性では、性染色体に関しては35%の精子が正常で、受精しても児に大きな異常を来たさないとされるr(Y)(p11.3q12)精子を含めると59%の精子が正常精子と考えられた。また、13番,21番染色体を(13/21)、(13/13/21)、(13/21/21)、(13/0)、(0/21)、(13/13/21/21)で持つ精子の割合は各々65%、6%、6%、5%、11%、7%であり、13番,21番染色体に関してはinterchromosomal effectの存在が示唆された。
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