研究概要 |
(目的)我々はエストロゲン補充療法(ERT)によるLDLの小粒子化が動脈硬化に促進である可能性,さらにLDL小粒子化にはERTのTG上昇作用による脂質転送活性(LTR)の亢進が関与することを報告してきた。しかし,LTRの亢進だけではLDLの小粒子化は説明できず,他の因子の関与が必要である。そこで今年度はリパーゼ酵素に注目し,とくにリポ蛋白リパーゼ(LPL)がLDLの粒子サイズに与える影響を検討した。(方法)(1)閉経後女性を対象にプレマリン0.625mg/日を3カ月内服させ,治療前後に脂質濃度およびLDL粒子径を測定した。(2)LTRを亢進させる目的で,血漿を37℃で24時間incubationし,LDL内のTG,CE濃度と粒子径を測定した。(3)incubation後のLDLにリパーゼ酵素としてLPLを添加し,さらに37℃で24時間incubation後,LDLのTG濃度と粒子径を測定した。(成績)(1)プレマリン投与後,LDLの粒子径は減少し,LDL内のTGは増加,CEは減少した。(2)incubation後,LDLはTG-rich,CE-poorとなったが,粒子径には変化がなかった。(3)LPLの添加によりLDLのTG濃度は減少し,粒子径は減少した。(結論)LTRの亢進でTG-rich,CE-poorなLDL粒子に変化させるが,LDLサイズの減少は認めなかった。リパーゼ酵素の存在によりLDL内のTGが加水分解されると同時にLDLは小粒子化されることが明らかになった。今回,エストロゲンによるLDLの小粒子化の機序の詳細が明らかになった。来年度は(1)ERTによるLDL小粒子化が動脈硬化に促進的かどうか(2)エストロゲンに併用するプロゲステロン製剤がエストロゲンの抗動脈硬化作用にどのように影響を与えるかを検討する予定である。
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