研究概要 |
当学医学研究院形態機能病理学ならびに医化学との共同研究により、30例の進行卵巣癌症例(原発性漿液性腺癌)において腫瘍組織中のMDR1,MRP1,MRP2,MRP3mRNAの発現をreal-time RT-PCR法にて検討した。症例は初回治療後の臨床経過により予後不良群(8例)、予後良好群(11例)、中間群(11例)の3群に分けた。MRP1とMRP3の相対的mRNA量をみると、予後不良群では予後良好群に比較して有意に高値であった。またMRP1とMRP3のmRNA量は有意に相関しており、MRP1の相対的mRNA.高値は無増悪生存期間が短いことと有意に関連していた。以上より、進行性卵巣松江規制腺癌症例では、予後不良症例の特徴としてMRP1とMRP3のmRNAの増加がみられる。MRP1mRNAの高発現は無増悪生存期間の短縮を予測する指標として有用であると考えられる。 YB-1核内発現とシスプラチン耐性との関係をヒト由来卵巣癌細胞株と手術標本を用いてそれぞれ解析した。まず、耐性細胞株ならびに親株におけるYB-1の局在をWestern blot解析を用いて解析した。さらに原発巣と転移巣の組織標本がそろった35症例について、免疫組織学的にYB-1の核内発現を評価した。核分画と細胞質分画の抽出物についてのWestern blot解析によれば、シスプラチン耐性細胞株では感受性のある親株の細胞に比べて、核内YB-1発現が著しく高かった。免疫組織学的検討では、10症例については原発巣のYB-1核内発現が陰性であったものが再発巣では陽性となったが、2症例では反対に陽性から陰性に変化した。以上より、YB-1の核内発現は卵巣癌において獲得性シスプラチン耐性に関連があると考えられた。
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