研究課題/領域番号 |
12671615
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
産婦人科学
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 顕三 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (30294929)
|
研究分担者 |
平川 俊夫 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (20218770)
小林 裕明 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (70260700)
加耒 恒壽 九州大学, 医療技術短期大学部, 教授 (60185717)
|
研究期間 (年度) |
2000 – 2001
|
キーワード | 腫瘍関連抗原 / アポトーシス / リンパ球 / 線維芽細胞 / 予後因子 / 絨毛細胞 |
研究概要 |
本研究では婦人科癌に高率に発現する腫瘍関連抗原RCAS1の構造、発現調節およびリンパ球の細胞死誘導機序に関する甚礎的解析ならびに、婦人科癌の診断・治療への臨床応用について検討を行うことを目的とした。これまでの碁礎的解析によってRCAS1が213アミノ酸から構成される分子量40kDaのII型膜タンパクであり、エストロゲンによりその発現が増幅されること、K562細胞、正常腎293細胞、Tリンパ球、NIH3T3細胞を含めた線維芽細胞にアポトーシスを主体とした細胞死を誘導すること、およびRCAS1の発現と子宮頸部扁平上皮癌、子宮頸部腺癌、子宮体癌におけるリンパ節転移や局所浸潤を含めた臨床進行期や予後と強い相関を示すことが明らかとなった。特に子宮頸癌と子宮体癌においてはRCAS1発現は多変量解析の結果、独立した予後因子として選択された。さらに、RCAS1は血清刺激やTPA刺激により細胞膜上で切断され、培養液中に遊離しRCAS1受容体を発現する標的細胞をアポトーシスに導くこと、子宮頸癌組織および子宮体癌組織においてRCAS1発現変化と間質細胞であるTリンパ球および線維芽細胞のアポトーシスをタネル法にて解析した結果、RCAS1の発現によりTリンパ球と線維芽細胞のアポトーシスが惹起され、間質細胞の減少を主体とした腫瘍間質の変化が認められた。以上の結果よりRCAS1は、細胞膜上に存在する分子により切断されること、腫瘍組織の間質細胞であるTリンパ球や線維芽細胞を細胞死へ誘導することで腫瘍細胞の浸潤・転移に有利に作用していること、細胞間接着機能を制御する分子によりRCAS1の発現が制御されていること、が推測される。子宮体癌サンプルを用いた臨床病理学的検討では正常内膜、増殖症、体癌のgradelおよび2、grade3と次第に発現頻度が増加しており、RCAS1が子宮体部内膜の悪性変化および組織学的低分化度と相関することが示唆された。また腫瘍細胞以外でもRCAS1発現による細胞間相互作用を示唆する結果を得ている。すなわち初期繊毛細胞におけるRCAS1とFas-Lの発現を検討したところ、進行流産での発現が減弱するとともにNK細胞の浸潤、活性化が亢進しておりRCAS1およびFas-Lが子宮内での母胎免疫システムを抑制することにより初期の妊娠維持機構と密接に関連することが考えられた。 以上のように婦人科癌で高頻度に発現するRCAS1は、臨床的に予後と相関し病理組織学的に腫瘍の悪性度と関連を有することが示唆された。腫瘍が発現するRCAS1が周囲リンパ球の細胞死を誘導し、線維芽細胞を主体とした間質組織の変化を惹起することから、RCAS1は腫瘍細胞の浸潤・転移過程で主要な役割を演じていることも考えられる。今後はさらなるRCAS1の機能解析を行いながら、RCAS1をターゲットとした婦人科癌の治療戦略の立案を試みる予定である。また、RCAS1が初期の妊娠維持機構と密接に関連することが示唆されたことから、生体におけるRCAS1の生理的機能の解析も重要であろう。
|