研究概要 |
1、ヒトとラットのμ-及びm-カルパインのN末端と活性中心のペプチド、及びカルパインによって分解されることが報告されているインテグリンβ1,3サブユニットの細胞内ドメインのペプチドを合成した。また、それを用いて抗カルパイン及びインテグリンのペプチド抗体を作製した。 2、正常の月経周期を持ちホルモン療法などの治療を受けておらず、子宮筋腫等の治療のために子宮摘出術を施行された患者よりインフォームドコンセントのもとに、常法に従い子宮内膜細胞を分離培養し、実験に供した。 3、方法1で作製した各種ペプチド抗体と、方法2で分離採取した培養細胞を用いて、免疫組織染色法、SDS-PAGE・ウエスタンブロツティング法によりカルパイン及びインテグリンの動態検索を試みた。陽性対照としてカルシウムイオノフォア(A23187)、タプシガルギン、イオノマイシンの添加実験を行った。病理的対象として低酸素培養実験を行い、カルパイン及びインテグリンの動態を検討した。尚、同条件下における細胞内カルシウム濃度の上昇はFura 2-AMを用いたARGUS50/CASystem及びFluo3-AMを用いた共焦点レーザー顕微鏡で確認した。その結果以下の成績が得られた。 (1)子宮内膜上皮と間質細胞の核及び細胞質で体酸素条件下において細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。 (2)免疫染色法において、子宮内膜上皮と間質細胞で抗前駆体型μ-カルパイン抗体の染色性が主に細胞質に観察され低酸素培養下で染色性が低下した。同培養下で抗活性型カルパイン抗体の染色性が増加した。また同状態において細胞質の細胞膜近傍に観察された抗インテグリンβ1、3抗体の染色性が減少した。 (3)Western Blotting法では同培養下で抗前駆体型μ-カルパイン抗体の染色性の低下、活性型μ-カルパイン抗体の染色性の増加とドメインIII抗体によるカルパインの低分子化が観察された。また同状態において抗インテグリンβ1、3抗体の染色性が減少した。 以上より、子宮内膜上皮と間質細胞の細胞質に存在するμ-カルパインが低酸素状態で活性化され、子宮内膜インテグリンの細胞内ドメインを分解することが示唆された。
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