カルパスタチンはカルパインの内因性インヒビターであり、抗精子抗体の精子抗原のひとつであるBs-17と99.5%の相同性を持つ。抗カルパスタチン抗体が不妊症患者において有意に高値であることが報告されている。 今回、血清中抗カルパスタチン抗体の体外受精胚移植における意義を検討した。 正常月経周期を有する患者より同意のもとに子宮内膜組織を採取し、抗カルパスタチン抗体を用いて免疫染色法を行いその局在を検討した。また体外受精胚移植を行った12症例12周期を対象にして、hCG注射日の血清を採取、ELISA法にて抗カルパスタチン抗体を測定した。年齢、適応、エストラジオール(E2)値、プロゲステロン(P)値、12mm以上の発育卵胞数、卵胞1個当たりのE2、採卵日子宮内膜厚、回収卵子数、形態良好胚数(Veeck分類G1)、hCG陽性率、妊娠率と抗カルパスタチン抗体との関係を検討した。 子宮内膜組織の腺上皮細胞の細胞質に抗カルパスタチン抗体による染色が観察された。また抗カルパスタチン抗体値と年齢、適応、E2値、P値、発育卵胞数、卵胞1個当たりのE2、内膜厚、回収卵子数、形態良好胚数、hCG陽性率、妊娠率との間に有意な関係はみられなかった。hCG陽性症例の中でGSが確認された妊娠群とchemical abortion群の間ではchemical abortion群の抗体値が有意に高かった(p<0.01)。 子宮内膜上皮細胞に存在しているカルパスタチンに対する抗カルパスタチン抗体が着床や初期妊娠維持に対して悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。 現在、習慣流産患者血清中において検討中である。
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