研究概要 |
現在までにエストロゲン環境の異なる3群;正常月経周期群(n=70)、妊婦群(n=50)、閉経後群(n=70)について患者同意の下に採血し、末梢全血よりパーコール法にてリンパ球を分離し、total RNAを抽出し定量的RT-PCR法により、目的遺伝子の発現量を定量した。その結果,末梢血単核球でERα,βmRNAの発現をみとめたが、その発現特徴としてexon欠失ER mRNAの発現量が極めて低くいことが明らかとなった。ERαにおいてはそれぞれexon3,5を欠失しているERαΔ3mRNA, ERαΔ5mRNA、ERβにおいてはERβΔ5mRNAがほとんど検出されなかった。一方ERαΔ4mRNA、ERαΔ7mRNAはそれぞれ正常月経周期群症例の82%,65%で検出されたが年齢の増加とともにその検出頻度は低下傾向を示し、閉経後群では25%,15%の症例で、極めて低いレベルにおいて発現を認めた。また閉経後HRTを実施している症例では有意差は認めなかったが僅かにそれぞれの検出頻度、発現量の増加傾向を認めた。しかし高エストロゲン状態にある妊婦で検出頻度、検出レベルは月経周期群に対して有意差を認めなかった。ERαWt mRNAは正常月経周期群が閉経群に対して有意に高値を示し、月経周期群においても年齢依存性にその発現量は低下傾向を示した。閉経後ではHRT実施群がHRTを実施しない群に対して発現量の増加傾向を認めた。ERβW1 mRNAの発現はエストロゲン環境の異なる3群間に有意差は認められなかった。以上より加齢による変化により末梢血単核球にERαWt mRNAの発現にエストロゲン依存性と考えられる変化が生じていることが明らかとなった。またERαΔ4 mRNA、mERαΔ7 mRNAの発現についても同様な変化が生じており、ERmRNAの発現からの検討ではHRT実施にて末梢血単核球に若返りとも考えられる作用が生じていることが明らかとなった。
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