(1)ヒト精子細胞膜上のGPI(glycosylphosphatidyl-inositol)アンカー蛋白の同定 哺乳動物細胞膜には重要な機能を担うGPIアンカー蛋白が存在する。ヒト精子細胞膜からPI-PLC酵素処理によりGPIアンカー蛋白を遊離し、既知蛋白であるPH-20、およびSAGA-1がGPIアンカー蛋白であることを証明した。新たなGPIアンカー蛋白としてビオチン化した精子細胞膜蛋白を二次元電気泳動法により展開し、数種類のclusterを同定した。 (2)不妊婦人血清中の精子不動化抗体に対応する精子細胞膜抗原の同定 精子不動化抗体の対応抗原としてGPIアンカー蛋白が存在する。我々は二次元電気泳動を用い、不妊症の発生と密接に関連する精子不動化抗体の対応抗原を4種類同定した。 (3)精子不動化抗体保有患婦人において疾患感受性遣伝子は存在するか 精子不動化抗体を保有する不妊婦人の疾患感受性遺伝子を、正常日本人集団を対照としHLAの特徴を検討した。その結果、HLA-DRB1^*0901、およびHLA-DQB1^*0303が患者に有意に多く存在し、精子不動化抗体保有婦人に特異的な疾患感受性遺伝子と推察された。 (4)精子不動化抗体による受精障害と胚発生障害 精子不動化抗体保有不妊婦人の体外受精では、培養液に患者血清を添加すると受精率低下と、発生した胚にfragmentatibnを生じることを見出し、これをマウスにおいても再現した。精子不動化抗体を産生すると、胚発生を障害し避妊効果を発揮する可能性がある。
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