研究概要 |
子宮内膜癌の発生と予後を規定する遺伝子変異とそのタンパク発現について解析し、以下の所見を明らかにした。研究材料は組織標本(正常内膜20例、増殖症20例、類内膜腺癌127例)と内膜癌培養細胞株2株である。方法として、免疫組織化学とwestern blot法を用いた。 1.Cyclin E発現は分泌期内膜では全くなく、増殖期内膜や各種増殖症では1%以下であった。類内膜腺癌では81.9%の例に認め、癌で有意に高頻度であった。そのlabeling index(LI)は低分化癌で有意に高かった。 2.Cyclin D1発現は正常内膜でほとんど無く、内膜増殖症で65%、内膜腺癌では85%の例に認めた。そのLIは増殖症より癌で有意に高く、癌分化度別でも低分化のものに有意に高かった。 4.PTEN staining scoreは分泌期内膜に比べ、増殖期で有意に高値であった。各種増殖症では差を認めなかったが、内膜癌では低分化のものに有意に高かった。また、estrogen, progesterone受容体(ER, PR)量との関係では、逆相関していた。 3.他の細胞周期制御因子(昨年度までに検討)との関連では、cyclin EはKi-67,p53,cdk2と,cyclin D1はKi67,cyclin E, cyclin A、またPTEN発現はKi-67,cdk2,cyclin A, cyclin D1,cyclin E, p53,p27と有意に相関していた。 4.臨床病理学的予後因子との関連では、cyclin Eは筋層浸潤、脈管侵襲と相関していたが、cyclin D1とPTENはいずれとも相関していなかった。 5.PRを保有する内膜癌細胞株と保有しない細胞株2種を用いて、progestin(MPA)がP27発現を制御するかについて検討した。PRを保有する内膜癌細胞では、増殖の抑制されるMPA 10-6 Mの濃度にて24時間後1.6倍に増強された。PRを保有する内膜癌ではprogestinによるp27制御機構が保持されていた。
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