研究課題/領域番号 |
12671629
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
谷垣 礼子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00265852)
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研究分担者 |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
吉井 紀子 (社)北里研究所, 北里研究所病院, 産婦人科研究員 (80286541)
久慈 直昭 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80169987)
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キーワード | HIV / ヒト免疫不全ウィルス / 性行為感染症 / 精子 / 精液 / プラークハイブリダイゼーション / 水平感染 / 不妊症 |
研究概要 |
本年度はHIVウイルス分離培養法である改良ブラークハイブリダイゼーション(PH)法を用いて精液中の感染性細胞の定量的評価をおこない、その病期・化学療法との相関を検討することにより精液を介したHIV感染伝播様式解明を試みた。 (1.精液中からのウィルス分離培養法に関する基礎的検討)精しょう成分のHIV感染性への影響を検討するため、認知濃度の培養ウイルス株を精しょう中に加え、これをリンパ球と混合培養することを試みた。精しょう存在下では添加ウイルス液の感染性が低下することが確認されたが、興味深いことにこれを超遠心にて遠心分離して沈殿させたウイルスは、精しょうと反応させない場合の4.5倍の感染性を示し、精しょう中にウイルス感染性を促進するウイルス付着性分子が存在する可能性が示唆された。 (2.HIV感染各病期患者の血中・精液中ウイルス遺伝子量・感染性の解析)無症候性キャリア(AC)5例、エイズ関連症候群(ARC)1例より採取した血液・精液検体をPCR法、および改良PH法にて感染性を検討した。血液中のウイルスは3症例で培養可能であったが、精液中では全ての症例で感染性ウイルスを分離できなかった。6症例中5症例は化学療法施行中であり、これらの症例では血液中に160-246コピー/mlのウイルスDNAが検出されたが、精液中のDNA・RNAは共に検出感度以下であった。これに対して化学療法未孝施行のARCの1症例では・精液中細胞成分のウイルスDNAは510コピー/mlと血液中と同程度に高値であった。 これらの結果から従来より報告のある化学療法後の精液中ウイルス遺伝子量低下が確認されたと共に、精しょう中の何らかの物質がウイルスの感染性を促進している可能性、および未治療症例での精液中ウイルスDNA高値という、2つの全く新しい所見が得られた。現在精しょうの感染性促進分子の確認、および未治療例での精液中ウイルスDNAの由来を検討中である。
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