研究概要 |
【目的】目的は,妊娠中毒症の発症に関連する母体因子がどのような機序で胎児側胎盤循環に影響を及ぼしているかを母児両側を独立して灌流するヒト胎盤灌流法ならびに胎盤絨毛膜板血管のリング標本を用いて明らかにすることである.今年度は,以前からの実験の継続であるが,エタノールの胎盤循環に及ぼす影響についての検討を行った. 【方法】ヒト胎盤の灌流は既に報告した方法(大橋ら,1995)により行った.灌流液はMedium199を使用,母体側灌流液は5%CO_2+95%O_2によりoxygenationし18ml/minの速度で,胎児側灌流液は5%CO_2+95%N_2によりdeoxygenationし3ml/minの速度で,各々定流量ポンプにより灌流を行った.胎児側動脈に圧トランスデューサーを接続することにより,胎児側灌流圧をHewlett-Packard78432Aにてモニターした.また,作用機序を明らかにするために胎盤絨毛膜盤の血管のリング標本を用いた検討も行った. 【成績】母体側,胎児側灌流液中へのエタノールの投与により濃度依存性に灌流圧は上昇し,0.3%エタノールでそれぞれ15.0±7.1%,17.8±1.1.1%上昇した.また,母体側投与と胎児側投与で胎児側灌流圧の上昇率はほぼ同等であった.リング標本を用いた作用機序の検討では,エタノールのCa^<2+>-channel agonist様作用と小胞体内のCa^<2+>放出作用が関係していること,さらにK^+-channel様作用があることも示唆された. 【結論】今年度の検討では,エタノールが胎盤胎児側の血管を収縮することが胎児性アルコール症候群における子宮内発育遅延の発症機序の一つになっていることが明らかにされた.さらに,妊娠中毒症に関連した血管作動性物質について検討する予定である.
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