研究概要 |
子宮頸癌克服のためには、その原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対する癌ワクチンの開発が重要である。より有効性の高いワクチンの開発と投与法について検討した。 C57BLマウスにHPV16E7ペプチドワクチンを皮下、経鼻、経膣、合成樹脂を用いる皮膚パッチにて、2回免疫したマウス群と生食あるいはアジュバントだけを投与したマウス群を陰性コントロール群とした。これらの群より1回免疫後と2回免疫後に採血し、血清を分離する。同様に膣分泌液を採取する。血清中のHPVE7に対するIgG抗体、膣分泌液中のHPVE7に対するIgA抗体をマイクロプレートリーダーで測定し、免疫した4群とコントロール群を比較検討した。血清中のHPVE7に対するIgG抗体は、すべての群において陰性であった。膣分泌液中のHPVE7に対するIgA抗体は抗体価が低く測定不可能であった。免疫2週間後にC3株細胞(mouse embryonic cellsをHPV16E7とEJrasで腫瘍化した株細胞)を皮下接種し、腫瘍の大きさ、重量を測定し、腫瘍阻止能力を比較した。また、腫瘍内のCD4,CD8リンパ球の分布をモノクローナル抗体で免疫組織染色した。HPV16E7ペプチドワクチンを皮下、経鼻、経膣、合成樹脂を用いた皮膚パッチにて免疫した4群はコントロール群と比較して腫瘍は小さく、重量も有意に少なかった。また、粘膜免疫群のほうが全身免疫群より腫瘍は小さく、重量も少なかった。免疫組織染色では、免疫後の腫瘍組織内で、粘膜免疫、全身免疫群ともにCD4,CD8陽性リンパ球が増加していた。このことは、ペプチドワクチンのよる粘膜免疫と全身免疫は局所での細胞性免疫応答を誘導することによって腫瘍阻止効果があることを示唆している。
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