過去20年間の唾液腺病理標本を再検討した結果、当科で新たに唾液腺MALTリンパ腫と診断された症例7症例(10検体)(頭頸部腫瘍、25(1)、19-24.1999)につき、作成された病理標本に対して、唾液腺組織浸潤細胞の膜表面抗原・免疫グロプリン保有細胞の各クラス別の免疫組織化学的染色を行った。組織状態の違いなどにより染色性に差違があり、病理標本の作成や抗体の希釈率など、これからの検討を要すると思われる。 上記7症例(10検体)のMALTリンパ腫と診断された患者以外にも、MALTリンパ腫と診断される症例があると考えられる。当科においては、過去約20年間に約400症例の唾液腺疾患で外科的切除術、或いは生剣術が施行されており、上記7症例の大部分が罹患していたシェーグレン症候群についてもその診断を行うために、口唇唾液腺生検を施行した症例も100例以上にのぼっている。本年度はこれらの症例についてH-E染色標本の所見を再検討し、リンパ増殖性疾患と診断される標本を抽出してきた。更にこの中から免疫組織化学染色法およびPCR法により、唾液腺MALTリンパ腫症例を探し出す準備を進めている。 当科における症例として、平成9年にシェーグレン症候群を合併した耳下腺MALTリンパ腫野市症例を経験したが、本症例は局所再発を繰り返し、従来予後良好と考えられていた本症例の概念とずれたものとなった。この為本年度は上記7症例(10検体)の更なる臨床経過を追跡調査・検討するとともに、MALTリンパ腫のみの診断を得た患者との比較で、治療内容および再発の有無や生命予後について調査・解析を行った。
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