研究概要 |
まず、経頭蓋骨的超音波ドプラ法を用いて、正常成人を対象としたhead up tilt,head down tilt試験を行い、中大脳動脈の血行動態を測定し、動的脳血管自動調節能の評価を試みた。ドプラ法によって計測された中大脳動脈血流波形より、実質的に脳動脈の環流が停止する圧(CCP:critical closing pressure)を算出し、中大脳動脈の高さに静水圧補正した橈骨動脈圧(ABP_<MCA>)より、脳環流圧(CPP:cerebral perfusion pressure)を算出し、中大脳動脈血流速度(FV_<MCA>)との対応を検討した。これによれば、FV_<MCA>はCPPの変動に一致して変動し、CPPはABP_<MCA>の変動に伴うCCPの変動によって規定されていた。さらに、重炭酸負荷状態で脳血流自動調節能を測定すると、FV_<MCA>はCPPの変動に一致して変動したが、CCPの著明な低下によって、CPPはABP_<MCA>の低下の影響をうけにくくなることが示された。頸動脈切除症例を対象とした検討では、中大脳動脈血流速度は術後1-2日で著明に回復することが示された。これは同様の検討を行うと、CPPがABP_<MCA>の上昇ではなくCCPの低下により上昇したためであった。また、頸部郭清術による内頸静脈の切除はCCPを上昇させ、頸動脈切除症例における動的脳血流自動調節能を狭い範囲に限局することが示された。以上より、一側頸動脈切除後には脳血流自動調節能が作用し脳血流を維持することが示された。自動調節能が不十分な症例においては、CPPを上昇するため血行再建を行いABP_<MCA>を上昇させるか、あるいは頸部郭清術を伴う症例では、内頸静脈の再建によるCCPの低下をはかることが有用であることが示された。
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