1.多系統萎縮症患者の吸気性喘鳴発生機構を解明するために、プロポフォール麻酔下、多系統萎縮症患者において声門閉鎖筋筋電図を記録し、喉頭気流動体を解析した。通常呼気時に活動する声門閉鎖筋が吸気時に活動し、声門を吸気相に積極的に閉鎖させ、喉頭喘鳴を引き起こすことを明らかにした。またこの吸気性閉鎖筋活がCPAPによって消失することを明らかにした。これは多系統萎縮症患者の吸気性閉鎖筋活動が気導反射を解して生じている事を示していた。 2.同様の吸気性声門閉鎖筋活動が単なる喉頭狭窄症患者(声門閉鎖筋麻酔を伴わない)にも現われることを明らかにした。この吸気性活動は気管孔の開大によって消失し、やはりこの吸気性閉鎖筋活動も気導反射を解して発生していることが強く示唆された。 3.以上の現象を解析するために、ネコを用いて以下の実験を行った。プロポフォール麻酔下にネコの両声帯を意図で引き寄せて声門狭窄状態を作り出し、声門閉鎖筋筋伝図を記録した。このような条件下で吸気時閉鎖筋は吸気時に強く活動した。この活動は気管孔の開放、および喉頭へのキシロカイン噴霧により消失し、気導反射のうち喉頭反射がこの吸気性閉鎖筋活動に関与していると考えられた。多系統萎縮症患者における吸気性声門閉鎖筋活動は気導反射を解する反射性活動であり、特に喉頭反射を介するものであることが推測された。
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