感音難聴原因遺伝子の分子モーターであるミオシンVIIA遺伝子変異を、遺伝性非症候群性感音難聴者ならびに原因不明の感音難聴者において同定し、その経過を追跡する研究を行った。当該期間中に当科外来を受診した81家系114症例の原因不明の遺伝性両側性感音難聴症例を対象にした。ミトコンドリア遺伝子3243変異が2家系2症例、ミトコンドリア遺伝子1555変異が1家系1症例においてそれぞれ同定された。しかしながら、ミオシンVIIA遺伝子変異は同定されなかった。以前に同定したミオシンVIIA遺伝子変異が既知のDFNA11家系においては、当該期間中に純音聴力検査、耳音響放射検査、語音明瞭度検査、アブミ骨筋反射検査、聴性脳幹反応検査そして温度眼振検査などの検査を行った。その結果、純音聴力検査では全例が左右対症性の両側感音難聴を呈していた。オージオグラムのパターンは、高音漸傾型あるいは平坦型であった。1年に平均0.2から2.1dBの聴覚閥値の悪化がみられた。耳音響放射は全例で同定されなかった。最高語音明瞭度は、平均純音聴力が50dBより良好であれば良好であったが、平均純音聴力検査が60dBを越えると、70%以下に低下していたアブミ骨筋反射検査は陽性で、迷路性難聴の指標のひとつである補充現象は陽性であった。聴性脳幹反応検査では第1波もしくは第V波の潜時延長を半数で認めた。温度眼振検査でも半数に前庭機能の低下が同定されたが、自発眼振ははっきりせず、いずれの症例も自覚的めまいはなかった。
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