研究概要 |
前庭障害患者の日常生活動作の異常を評価する事は、従来の方法では困難である。本研究では、光学的方法(ビデオ撮影)で記録した身体の動きを、画像情報処理により立体画像として再構築して定量的に分析することにより、体平衡機能を3次元的指標で評価する方法(3次元動作解析法)を、臨床応用する事を目的とした。 被検者の両側頭部,両肩、両大転子に、直径2cm程度の反射マーカーを張り付けた。被検者の動作はCCDカメラ2台で撮影した。撮影後、ビデオ画像を再生してコンピュータのメモリに取り込み、1枚毎の画像に写った反射マーカーのコンピュータ画面上の位置を読みとり、カメラ2台分のマーカー位置データとキャリブレーション値を元に、DLT法を用いて、実空間における3次元座標を計算した。健康被検者と一側前庭障害患者に下記の動作を行わせた。 (条件1)片方の足の踵を、他方の足のつま先につけて、閉眼で30秒立たせた(マン姿勢)。 (条件2)閉眼で単脚起立を30秒間行わせた。 (条件3)閉眼で30秒間の足踏み動作を行わせた。 動作の評価には、頭部、肩、大転子の偏倚角度と回転角度を用いた。頭部回転角度は、両側頭部の反射マーカーを結んだ直線が、身体長軸周りに回転した角度を示す。肩回転角度は、両肩の反射マーカーを結んだ直線が、身体長軸周りに回転した角度を示す。健康被検者と一側前庭障害患者の間には明確な違いを認めた。患者では、条件1、条件2では頭部偏倚角度と大転子偏倚角度の間に高い相関性を認めた。頭部回転角度と大転子回転角度の間も同様であった。条件3では、頭部回転角度と肩回転角度の間に高い相関性を認めた。一方、健康被検者では、どの条件に置いても、頭部角度変化と他部位の角度変化の間に明らかな相関性は無かった。以上のように、3次元動作解析は、一側前庭障害患者の動作異常を検出する上で極めて有用な方法であることがわかった。
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