研究概要 |
本年度の研究では,昨年度に引き続き嗅粘液の電解費濃度め維持や調整の機構について検討をした.正常ラットの嗅上皮におけるイオン恒常性維持機構として,ナトリウムポンプであるナトリウム・カリウムアデノシントリフォスフアターゼ(sodium, potassium-adenosine triphosphatase, Na^+,K^+-ATPase)を免疫組織化学的染色法により,またナトリウム・プロトン交換輸送体(sodlum/proton exchanger, NHE)を定量的PCR法により検索した.また,グルココルチコイドレセプターの発現を免疫組織化学的染色法により検索をした.さらに硫酸亜鉛を点鼻した嗅覚障害モデルでも同様に検討した. 正常ラットでは,Na^+,K^+-ATPaseはBowman腺の腺管で最も強く発現が見られ,そのほかにBowman腺の腺房細胞や嗅細胞でも発現が見られた.またNHEの発現では検索した5つのアイソフォームのうちNHE-1が,嗅上皮でその生理的役割が期待できる量のmessenger ribonucleic acid(mRNA)の発現が確認された.また,グルココルチコイドレセプター抗体は支持細胞の鼻腔側の細胞質で最も強く見られ,そのほかに支持細胞の基底側面の細胞質でも発現が見られた. 嗅覚障害モデルでは,嗅上皮の回復過程において嗅上皮の再生とともにNa^+,K^+-ATPaseやグルココルチコイドレセプターも再生することが観察され,これは行動学的な観点でも嗅刺激性行動観察法により嗅覚障害の改善が確認された.以上の結果から,嗅粘液の電解質の維持や調節にNa^+,K^+-ATPaseやNHE-1が関与し,さらにグルココルチコイドレセプターの制御を受けている可能性が示唆された.
|