研究概要 |
固形癌は正常組織に比べて低栄養、低酸素、低pHの状態にあり放射線抵抗性を示すことが知られている。一方温熱は、そのような腫瘍の環境のなかでも特に低pH条件下の細胞にたいして感受性が高いことが知られており、固形癌治療においては有力な治療法として期待されている。申請者はまず、細胞に対する温熱処理や一過性の低pH暴露による、p53依存型のアポトーシス誘導の可能性を検討したところ、温熱による細胞死とアポトーシス誘導は、p53野生型で少ないこと、また温熱におけるpH効果にはアポトーシス誘導の増強が関与しているが、それはBaxやBcl-2を介したp53依存型ではないことがわかった(Ohtsubo et al.Int.J.Hyperthermia,2000)。続くヒト上顎癌細胞株(IMC-3)由来の低pH耐性細胞を用いた検討にて、このpH効果は慢性の低pH環境においても、温熱誘導型アポトーシスの増強効果として観察されることを明らかにした(Ohtsubo et al.Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.,2001)。さらに興味深いことは、外因性にBax遺伝子を導入しBax蛋白を強制発現させたIMC-3細胞では、親株に比べて有意にその温熱感受性およびアポトーシス誘導が増強していたことである(投稿準備中)。このことは癌温熱療法にBaxを用いた遺伝子治療が応用出来る可能性を示唆しており、さらに慢性の低pH環境下で、アポトーシス誘導を増強出来ないか検討中である。
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