鼻粘膜過敏性の成立へのT細胞の影響を検討した。ヒスタミンに対する鼻粘膜過敏性と鼻粘膜への好酸球浸潤の増加は、Th2に富むオバルミン感作CD4+T細胞を移入することで、CD4+T細胞欠損マウスにおいても肥満細胞欠損マウスにおいても認められた。オバルミン特異的Th1細胞をオバルミン感作マウスに移入しても鼻粘膜過敏性亢進は改善しなかった。このことから好酸球、肥満細胞は鼻粘膜過敏性の誘導には必ずしも必要とせず、Th1ではなくTh2サイトカインが強く誘導に関与している可能性が示唆された。 追加検討として、急性のRSウイルス感染は、感染後のオバルミン感作への反応を増強し、また、あらかじめ感作したマウスの鼻粘膜過敏性を強く亢進する。このような感染マウスにおいてはTh1サイトカインだけでなく、Th2サイトカインの産生が鼻粘膜過敏性成立に関与していると思われる。しかしながら、鼻粘膜に多量にIL-10を発現するIL-10トランスジェニック(TG)マウスでの検討では、RSウイルス経鼻感染後の気道でのウイルス増殖は非TGマウスに比べ有意に抑制された。IL-10はTh2サイトカインに属し、抗炎症作用を有することが知られているが、IL-10はこのような条件下では、ウイルス防御と鼻粘膜過敏性の軽減に寄与する可能性が示唆された。このように、T細胞により誘導された鼻粘膜の過敏性亢進、反応性亢進には様々な機序が関与している可能性がある。
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