ステロイドの内耳への直接投与が及ぼす影響を、特に前庭機能に関して実験的に明らかにすることを目的とした。 モルモットの外側半規管を手術で切断後、外リンパ液を吸引して同部位を閉鎖することで、末梢前庭障害モデルを作製した。障害側は、すべて右側とした。障害作成後、浸透圧ポンプを用いて生食、ベタメタゾン1 mg/ml、0.1 mg/ml各々を直接蝸牛基底回転鼓室階に注入した3群を作製した。処置前後で台形方式回転検査を行い、眼球運動を暗所開眼下で赤外線CCDカメラで観察し、VTRに録画して回転後眼振を観察した。 ベタメタゾンを投与した2群は、後眼振の回復が早期にみられ、処置後5日目で生食のみの注入群に比べて、後眼振数は有意に多かった。ベタメタゾン1 mg/ml、0.1 mg/mlの間に、有意差は認めず、ベタメタゾンが末梢前庭に及ぼす影響はdose-dependentではなかった。 内耳に直接ステロイドを投与することで、末梢前庭障害の回復を促進できることが明らかになった。本法は、持続的に一定量のステロイドの内耳投与が可能であり、より有効な治療法となる可能性がある。
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