研究概要 |
1.血管条中間細胞(色素細胞)の内リンパ直流電位産生における役割。 モルモット血管条から中間細胞を単離し、パッチクランプ・ホールセル法・電流ゼロ固定モードで膜電位を測定し、この膜電位に対する各種K^+チャネル阻害薬の効果(濃度と効果の関係)を調べた。モルモットを用いた理由は以下の血管灌流法による実験と同じ動物種を使うことによって結果の比較を容易にするためである。さらにモルモットの内耳機能を前下小脳動脈の灌流法によって維持し、各種K^+チャネル阻害薬(Ba^<2+>,Cs^+,キニーネ、テトラエチルアンモニウム、4アミノピリジン)の内リンパ直流電位に対する効果(濃度と効果の関係)を調べた。この結果を上記の細胞レベルでの電位に対する効果と比較したところ、その類似性から中間細胞の膜電位と内リンパ直流電位の直接的な関連がわかった。 2.辺縁細胞の体積依存性Cl^-チャネル分子の同定。 これまでに主にラットのCl^-チャネルが他の臓器でクローニングされているので実験動物はラットを用いた。RT-PCR法で血管条組織に発現しているCl^-チャネルをスクリーニングしたところ、血管条にClC-K1が発現していることがわかった。さらにsingle cell RT-PCR法(パッチクランプ電極内に細胞質を吸引してmRNAの発現を調べる)でClC-K1が辺縁細胞に発現していることが証明された。これまでに報告されているClC-K1の電気生理学的性質と辺縁細胞の電気生理学的性質もよく似ており、ClC-K1が辺縁細胞の主要なCl^-チャネルであることはほぼ確実となった。
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