研究概要 |
血管条中間細胞(色素細胞)の内リンパ直流竜位(EP)産生における役割 モルモット血管条から中間細胞を単離し、膜電位に対する各種K^+チャネル阻害薬の効果(濃度と効果の関係)を調べた。さらにモルモットの内耳機能を前下小脳動脈の灌流法によって維持し、各種K^+チャネル阻害薬(Ba^<2+>,Cs^+,キニーネ、テトラエチルアンモニウム、4アミノピリジン)の内リンパ直流電位に対する効果(濃度と効果の関係)を調べた。この結果を上記の細胞レベルでの電位に対する効果と比較したところ、その類似性から中間細胞の膜電位と内リンパ直流電位の直接的な関連がわかった。 内リンパ直流竜位(EP)に対する外リンパCs^+の影響 外リンパ中Cs^+によってEPが一過性に上昇したあと低下することが明らかになった。Cs^+を含む液に切り替えて10分以内にみられる一過性のEP上昇はコルチ器を構成する有毛細胞等の基底側膜に存在するK^+チャネルが抑制されることによると考えた。これに引き続くEPの低下はCs^+の血管条に対する作用の可能性が高い。外リンパ中のCs^+がラセン靭帯繊維細胞のNa^+-K^+-ATPaseによって細胞内へ取り込まれ、ギャップ結合を介して中間細胞へと運ばれて細胞内からK^+チャネルを抑制する結果、膜電位の脱分極を起こし、これがEPの低下として観察されると考えられる。この結果は外リンパに投与したCs^+のEPに対する効果が、我々の提出したEPの産生に関する5-コンパートメントモデルで説明されうることを示している。 血管条内の細胞間隙を介するイオン輸送の動態 ブメタニドによって血管条内の細胞間隙が拡大するメカニズムについて以下のことが明らかになった。 1.ブメタニドによる血管条内細胞間隙の拡大には、Na^+-K^+-ATPaseによる能動的イオン輸送が関与している。2.ブメタニドによってNa^+-K^+-Cl共輸送体が阻害された状態でNa^+-IK^+-ATPaseが機能すると、細胞間隙には主にNaが貯留すると考えられる。3.これまで血管条においてはK^+の輸送が主に注目されてきたが、Na^+も外リンパと血管条の間に活発な輸送機構がある。4.Na^+の輸送にはアミロライド感受性の輸送機構が関与している。この機構として上皮性のNa^+チャネルとNa^+-H^+交換輸送体が考えられる。
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