研究課題/領域番号 |
12671672
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
梅崎 俊郎 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (80223600)
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研究分担者 |
安達 一雄 九州大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
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キーワード | VTR咽頭食道透視検査 / 嚥下障害 / 定量解析 / 喉頭遅延時間 / 咽頭クリアランス / 加齢 / 喉頭挙上速度 / 喉頭挙上距離 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき、当科嚥下外来にて施行しているVTR咽頭食道透視の記録画像から咽頭期嚥下の惹起性の指標となる喉頭挙上遅延時間、および咽頭クリアランスを定量化に計測した。あらゆる年齢層の健常者につきこれらのパラメータを解析し加齢と嚥下機能の相関について検討した。 解析の結果、咽頭クリアランスからみた嚥下機能は、高齢者においても比較的よく保たれており、誤嚥をきたすものは1例も認められなかった。全例における咽頭クリアランスの平均値は90%以上で、男女差もみとめられなかった。高齢者の嚥下障害の背景には、痴呆や脳血管障害の有無、全身的な筋力の低下などが関与しているものが多いが、今回の対象例は外来検査が可能な健康者であるので、対象を基礎疾患の有無等を考慮に入れた上で行えばまた違った結果になった可能性も否定できない。しかしながら年齢を60歳前後で2群に分けて比較すると、60歳未満では加齢とクリアランス値の間に有意な変化がみられなかったのに対し、60歳以上では負の相関がみられた。高齢者では咽頭クリアランスの低下に加え、多発脳梗塞による咽頭期嚥下の惹起性の低下など他の因子が付加されることで誤嚥の可能性が高まると考えられる。 嚥下時の喉頭挙上に関しては、喉頭の安静位は加齢とともに下降することが知られている。そのため高齢者では喉頭挙上での移動距離が延長し咽頭期嚥下での誤嚥が起こりやすくなると思われるが、今回我々は当科にてVTR下食道透視を施行した患者の喉頭挙上(椎体方向)の解析を行い、加齢による変化についての検討を行った。その結果、喉頭挙上距離は加齢とともに増大するのに対して、喉頭挙上遅延時間は70歳台までほぼ一定で挙上の遅れは認められなかった。また喉頭挙上速度は加齢とともに増大するという結果と併せて判断すると、喉頭挙上距離の増加を喉頭挙上速度の増大で代償し喉頭挙上の遅れを相殺していることが判明した。
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