研究概要 |
我々はこれまでの研究で、IL-2遺伝子導入後の頭頸部扁平上皮癌培養細胞が、リンパ球を介した腫瘍免疫を賦活化することを突き止めた。本研究ではさらにリンパ球を介した腫瘍免疫の機序に踏み込むこととした。すなわち、あらかじめ樹立された頭頸部扁平上皮癌培養細胞から、腫瘍特異的な抗原物質を抽出、同定し、腫瘍特異的細胞障害性リンパ球(CTL)の誘導を試みた。頭頸部扁平上皮癌培養細胞を大量培養し(約2x109個)、細胞融解液をつくり、これよりAfflnity column,高速液体クロマトグラフ,mass spectrometry等の手法を用いて、腫瘍特異性抗原(抗原ペプチド)を抽出・同定した。得られた抗原ペプチドはアミノ酸配列の異なる16種類であり、既知の生体内高分子化合物・酵素・ウイルス蛋白などとの相同性はまったく見られず、新たな腫瘍特異性抗原と考えられた。これらの抗原ペプチドを合成し、これを抗原として健常者由来の樹状細胞(DC)とリンパ球からCTLの誘導を試みた。ペプチドにより腫瘍特異的なCTLが誘導されたか否かを検討するために、g-IFN ELISPOT assayを行なった。その結果、ペプチド間に差はあるものの、10種類のペプチドにおいて約40個〜50個に1個の割合いでリンパ球が腫瘍細胞に反応し、g-IFNを分泌したと考えられた。以上の所見から、腫瘍細胞から抽出・同定・合成した16種類のペプチドのうち、10種類が抗原性を有し、DCによる抗原提示を経てリンパ球を腫瘍特異的なCTLへと誘導したことが示唆された。
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