研究概要 |
当該年度は卵形嚢並びに球形嚢両耳石神経と後半規管神経の単一前庭神経核ニューロンへの統合を細胞内記録方法でしらべた。このテーマに対しては直線加速度と角加速度刺激による解析も出来るが、単一前庭神経核ニューロンの軸策投射様式などを明確にした統合のメカニズムを明らかにしたいため、個々の前庭神経の選択的刺激法をもちいた。 結果1。球形嚢と後半規管の統合(Uchino et al.2000,Sato et al.2000) 球形嚢と後半規管入力を受けた(統合)ニューロンは記録した143の内47個(33%)に見られ、多くは(32/47、68%)頚髄に投射する前庭頚ニューロンであった。統合の形式は興奮性が多く、抑制性統合もみられた。統合の見られた前庭動眼ニューロンは(8/47、17%)のみであった。 結果2。卵形嚢と後半規管の統合(Uchino et al.2000,Zakir et al.2000) 卵形嚢と後半規管入力から興奮性及び抑制性統合のあったニューロンは、記録した160の内53個(33%)で、多くは(24/53、45%)前庭頚ニューロンであった。統合の見られた前庭動眼ニューロンは(13/45、29%)存在した。 結果3。球形嚢と卵形嚢の統合(Kushiro et al.2000) 卵形嚢と卵形嚢入力から興奮性及び抑制性の統合のあったニューロンは記録した140の内51個(36%)に見られ、この多くは(29/51、57%)頚髄に軸策投射していた。統合の見られた前庭動眼ニューロンは少なかった(7/51、14%)。 以上の結果から、統合の見られるニューロンの多くは前庭頚ニューロンであることが明らかとなり、直線加速度と角加速度の両情報は既に前庭神経核ニューロンで統合され姿勢制御関与し、一方眼球運動調節には両情報が個別に関与していることになる。
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