半規管神経並びに耳石器神経を選択的に刺激し、標的とする前庭神経核ニューロンから細胞内記録をしシナプス結合様式を明らかにした。実験動物として除脳ネコを用いた。 (1)耳石器系では交連性抑制による直線加速度増強機構は否定的であった。そこで左右迷路の卵形嚢神経と球形嚢神経を選択的に刺激し交連性抑制機構の有無を調べた。卵形嚢系では交連性抑制機構が強力に存在していた。一方球形嚢系には交連性抑制機構が殆ど存在しなかった。直線加速度増強のメカニズムとして、卵形嚢系では交連性抑制機構が重要で球形嚢系ではCross-Striolar Inhibitionが重要であることが明らかとなった。 (2)水平半規管入力と卵形嚢入力並びに水平半規管入力と球形嚢入力の単一前庭神経核ニューロンへの収束パターンを明らかにした。前庭神経核ニューロンを軸索投射様式で分類し解析すると、収束は主に前庭脊髄路ニューロンに見られ、収束するニューロンは記録したニューロンの約20%に達した。眼運動系に軸索投射するニューロンへの収束は少なかった。 (3)半規管系で検出される回転感覚は対側視床で中継される。ところが卵形嚢入力を受ける前庭神経核ニューロンは同側視床へ軸索投射していた。この前庭-視床ニューロンは内側縦束を通らず、橋網様体を上行していた。一方球形嚢入力を受ける前庭神経核ニューロンは対側視床へ軸索投射しているが数が著しく少なかった。
|