Retinoblastoma protein(pRb)は細胞周期制御における中心的な役割を担う蛋白であり、細胞分化とアポトーシスに関与する可能性が指摘されている。本研究の目的は、HPV16E7(pRbを不活性化することが知られている)を発現させた頭頸部上皮細胞の分化およびアポトーシス感受性を解析し、頭頸部上皮細胞の分化およびアポトーシス感受性メカニズムにおけるpRbの役割を明らかにしていくことである。平成13年度(2001年度)までの実験で、pRbの不活化が頭頸部上皮細胞のアポトーシス感受性を増強する可能性が示唆された。野生型HPV16E7(E7)のみを発現するベクターを正常頭頸部上皮細胞に導入してE7発現細胞を作製し、この16E7発現細胞のpRbが分解・不活化されていることを確認し、E7発現細胞は正常細胞と比較すると、(1)抗Fasモノクローナル抗体=CH11と(2)シスプラチンが誘導する細胞死への感受性が高いことがわかった。また、E7発現細胞では正常細胞と比較して野生型p53蛋白(p53)の発現レベルが上昇していた。平成14年度(2002年度)は、野生型E7および変異型E7(pRb結合領域内にDeletionを作製したpRbへの結合能を失うタイプのもの)を発現するベクターを作製し、pRbを正常に発現する様々な頭頸部癌細胞株に導入してE7・変異E7発現細胞を作製した。現在、これらのE7・変異E7発現細胞に複数のアポトーシス誘導シグナル((1)抗Fasモノクローナル抗体=CH11や(2)抗がん剤=シスプラチンおよび5-Fu)を与えてその際のFas/Fas-ligandシステムとやミトコンドリアシステム(チトクロームc放出→Caspase-9活性化→Caspase-3活性化)の動態を解析中である。
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