研究概要 |
近年免疫組織学的研究、組織化学的研究によって蝸牛内微小血管系に存在するNO(nitric oxide)合成酵素(NOS)の局在が明らかとなってきたことから、その血管反応についてNOが蝸牛内血流調節に大きく関与する可能性が考えられてきた。そこでその血流調節機構を考察するために、平成12年よりラットを用いた薬剤投与実験を行ってきた。方法としてラットに対し全麻下に中耳骨胞開放し、露出した蝸牛基底回転にレーザードップラー血流計プローブ先端を接触させNO合成阻害剤L-NAMEを全麻下に0.2-10mg/kgの各用量で静注投与して投与後の蝸牛血流変化を観察した。その結果蝸牛血流の用量依存性の低下が観察され、その低下はL-arginineの静注によって改善された。さらに局所での蝸牛血流反応を見るためその蝸牛正円窓を明視下におき、1%〜5%L-NAME溶液局所投与もおこなった。これら局所投与でも血流低下がL-NAMEの用量依存性に強くなっていた。これらのことから蝸牛の血流調節にNOが蝸牛局所およびさらに全身性に作用することで関与していることが考えられた。またさらにNOの関与する血管弛緩反応をさらに検討するために、NOの血管反応系の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)-サイクリックGMP経路を阻害することによる蝸牛の血流反応を観察するため、sGCの阻害剤であるメチレンブルー(MB)溶液5,10,20(μM)の各濃度でラット蝸牛正円窓窩に2μl滴下してその後の蝸牛血流変化を観察する実験を行った。その投与後の結果は各実験例によって蝸牛血流変化に変動が見られた。このことから、MBによる蝸牛局所の血流反応はより複雑な血流調節機能が関与していることが示唆されたが、今後さらに実験例を増やし、局所へ投与する薬剤濃度を変化させた追加実験や全身投与実験などによって検討を進めていくつもりである。
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