研究概要 |
当該年度では、嗅覚正常な健常者11名を対象として,ストロベリー(イチゴのニオイ、快適臭)、methyl cyclopentenolone(B4,カラメルのニオイ:やや快適臭),isovaleric acid(C3,汗臭いニオイ:不快臭)の3種類のニオイ刺激を,左右の鼻腔に1側ずつ与えて記録された脳磁図(MEG)を詳細に視察した。その結果,B4刺激に多くのアーティファクトが混入しているのが観察された。よって比較的アーティファクトの混入が少なかったストロベリー刺激とC3刺激を検討することとした。また11名の被験者のうちアーティファクトの混入が少ない7名を解析対象とした。 これらの選別された被験者において,各チャンネルのMEG波形の50秒間を離散フーリエ変換(DFT)を用いて周波数分析を行い、θ、α1、α2、β、γの各帯域におけるパワースペクトル密度を求めた。さらに各帯域のパワースペクトル密度を左右半球別に平均値と標準偏差を算出した。これらから刺激側と左右半球から記録されるMEGのパワースペクトル密度の差異,すなわち大脳半球優位性について検討した。 その結果、快適臭であるストロベリーの右鼻腔刺激ではθ、α1、α2、β、γのすべての帯域で右半球に、すなわち刺激同側のほうのパワースペクトル密度が大となった。しかし,左鼻腔刺激ではγ帯域のみで右半球の方が大きく,また無刺激ではβ、γの各帯域で右半球の方が大きかった。一方,不快臭のC3刺激の左鼻腔刺激でθ、α1、β帯域で右半球のパワースペクトル密度が大となった。また右鼻腔刺激と無刺激ではすべての帯域で有意差は認められなかった。このようにニオイの快適性によって優位となる鼻腔が異なっていることと,ニオイの快適性に関わらず右半球の脳活動が優位になることが明かとなった。
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