網膜における虚血性病変は、網膜血管における循環不全により血管新生が生じる。この血管新生には血管内皮増殖因子(VEGF)など、多くのサイトカインが関与しているとされている。3頭6眼の日本猿に、乳頭から1乳頭径以内の網膜静脈主幹をレーザー光凝固にて閉塞し、網膜中心静脈閉塞症を発症させ網膜虚血による血管新生発症モデルを作製。施行後1週(2眼)・2週(2眼)・4週(2眼)に眼球を摘出し、ホルマリン固定した後、角膜輪部に直角に切開し、虹彩・線維柱帯及び網膜の組織をもとに、それぞれの切片に対しABC法でVEGF・Angiopietin-2・Ephrin-B2・Eph-B4免疫組織染色を行った。虹彩ルベオーシスは、施行後3日において全例に観察された。虹彩・線維柱帯においてVEGFは、1週・2週・4週の全例で蛋白陽性を示した。Ephrin-B2は、1週では発現しておらず、2週・4週で蛋白陽性を示した。しかしAngiopietin-2・Epr-B4蛋白についてはいずれの時期においても陰性であった。また、網膜においてVEGFは虹彩・線維柱帯と同様に1週・2週・4週の全例で蛋白陽性を示したが、Ephrin-B2は2週で蛋白陽性を示しAngiopietin-2は1眼のみ2週で蛋白陽性を示した。Epr-B4蛋白についてはいずれの時期においても陰性であった。これらの事より、Ephrin-B2はVEGFと共に血管新生の発生・進展に関与しており、さらにEphrin-B2はVEGFにおくれて発現することから、血管新生の進展と成熟にも関与していることが推測される。
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