研究概要 |
1.眼内血管新生において主に発現するmatrix metalloproteinase(MMP)isoformの同定まず眼内血管新生モデルとして網膜新生血管モデルおよび脈絡膜新生血管モデルを樹立した。前者は生後7日目のC57/BLマウスを5日間高濃度酸素装置で飼育して網膜新生血管を作成し,後者はマウスの眼底にレーザー強凝固を行いBruch膜を穿孔することにより脈絡膜新生血管を作成した。これらの眼内血管新生モデルにおいて,網膜から抽出したRNAを用いMMP-2,3,9をプライマーにしたRT-PCRおよびMMP-2,9の抗体を用いた免疫組織学的検討を行った。その結果,網膜新生血管および脈絡膜新生血管の形成と時間的,空間的に一致したMMP-2,9の発現上昇がみられ,これらのMMP isoformが眼内血管新生と密接に関与することが明らかにされた。 2.MMPの内因性阻害が眼内血管新生に及ぼす影響の検討 つぎにMMPの発現を内因性に阻害したMMPノックアウトマウスを用いて,それぞれの単独阻害が眼内血管新生を抑制できるか検討した。Wild typeおよびMMP-2,MMP-9ノックアウトマウスに網膜新生血管および脈絡膜新生血管を作成し,それぞれ網膜新生血管が最大になる生後17日目と,脈絡膜新生血管が最大となるレーザー照射2週間後に眼球摘出し凍結標本とした。その後10μmの薄切切片を作成し,GSA-lectin抗体を用いて血管内皮細胞を染色し,新生血管のサイズを比較した。その結果,wild typeのマウスに比べ,MMP-2,MMP-9ノックアウトマウスともに網膜新血管,脈絡膜新生血管の発生が著明に抑制されている傾向がみられた。今後はさらに数を増加し,画像解析により統計学的有意差を検定し,眼内血管新生におけるMMPの重要性について解明する予定である。
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